【僕の小規模な生活】 福満しげゆき
僕の小規模な生活 1 (1) (モーニングKC) (コミック)
福満 しげゆき (著)
僕の小規模な生活 1 (1) (モーニングKC)
絵柄の先入観から、手に取らないで損をしている人が沢山いると思われる作家のひとり、福満しげゆき。
彼のメインの活動場所は、青林工芸舎なので、この本もサブカルに入れるべきか悩みましたが、一応コミックなどのジャンルわけは出版社で考えたいと思います、ので、ここはあえて男性コミックカテゴリに分類させていただきます。
さて、彼ですが。
表紙を見てわかるように、よく言えば個性的、素直に言ってしまうと「あんま上手じゃない」な絵柄の作家です。
丸っこい線は、どことなく「三丁目の夕日」の絵柄を思い出したりもしますが、内容は全く感動物ではないのでご注意下さい。
彼は、通常のサブカル創作漫画に加え、「僕の小規模な失敗」「まだ旅立ってもいないのに」といった、自虐的とも取れるエッセイ漫画の名手です。
この手の「ダメ人間な俺だけど転んでもただじゃ起きないぜ!」な漫画家というと、「失踪日記」の吾妻ひでおが有名ですが、彼ほどにヘビーでも無く、そしてどこかしらに過剰な自意識が伴う漫画、それが福満しげゆきです。
この漫画の内容は、売れない駆け出しの漫画家が、妻の給料に支えられながら、細々と漫画を描いていく、そんな日常をつらつら描き綴ったものです。
ですが、そこに、エッセイ漫画特有の「ほっこり」や「貧乏だけど心は錦」といったものはありません。
彼の生活は、もんすごくもんすごおおおおく、矮小で情けないです。
コンビニのバイトをバックレて辞める。
新聞配達のバイトもバックレて辞める。
「売れるのはエロ漫画だ!」と出版社に持ち込みをするも、不人気にて連載はすぐに終了。
同世代の人気漫画家に対しての、羨望。
100円ショップに勤めるも、泥棒騒ぎが起こり、何故かしっかり指紋を取られたり。
挙句の果てに、隣りに住んでいる爺さんが変死して、それを通報したりしてます。
何とか連載を持てることになり、妻も専業主婦となり、これでようやく安息か?と思いきや、心配性で疑り深い彼の生活は、まだまだいろんな小さな事件に巻き込まれていくわけで......。
夢を持っていても、才能がついてこない。
いつまで立っても、食べていけない。
何かと理由をつけては、仕事を辞めたがる。
彼の態度を傍らで見守る年下の妻は、頻繁に暴れたり、泣いたりするのですが、彼女の
「うわ〜ん私ばっかり働かせて〜!!」
という悲痛な叫びは、何かこう、胸に迫るものがありますね......。
いや、常識的に考えて、この人みたいな旦那、嫌だもの......。
でも、そんな不満を言いつつも、作者は妻を滅茶苦茶好いているし、妻も甲斐甲斐しくお弁当を作ったりして、なんだかんだ言って仲が良い二人の姿に、こちらもついつい安堵してしまいます。
この漫画は、一応は作者のエッセイ、となっていますが、大きな魅力のひとつに、第二の主人公とも言うべき妻の存在があります。
20歳で作者の元に嫁いだ妻は「ずんぐりむっくりした可愛い子ちゃん」と作者に称せられる通り、全編通して、基本的に笑っている人相の、ときとしてヒステリックに大暴れをする、可愛い奥さんです。
そんな奥さんに翻弄されつつも、日々の活力の糧を妻から貰っている作者も、また可愛い。
彼女の人気はファンの間でもかなりものもので、先日は「うちの妻ってどうでしょう?」という、妻をメインにした四コマ漫画の単行本まで刊行されています。
そんな福満しげゆきの漫画ですが、この一冊が出るまでに数年の月日を要しているので、最初と最後の絵柄の変わりようは凄まじいです。
その変化を見るだけでも面白い一冊と言えます。
しかも、そんなに上達しているように見えない(ひどい)。
人間は、本当にちっぽけで、矮小なものですが、強がって綺麗な部分を誇張するばかりでは、疲労してしまいます。
この漫画は、凝り固まった現代人(特に夢を追う現フリーター)の頭を、そっと解きほぐしてくれる、そんな存在だと思います。
傷を舐め合う負け犬、とまではいきませんが、自分の背負った肩の荷(あーちゃんと稼がなきゃなー、実家に仕送りしなきゃなーとか)を、ちょっとだけ肩代わりしてくれる一冊です。
と、このように、開き直って元気になりたい!という方にオススメの一冊です。
ですが、読んで「まだまだ自分だいじょーぶじゃん」と、現状に胡坐をかいてしまう人には、危険なものかもしれません。
脱力系モラトリアム漫画、一家に一冊どうでしょう。
※現在2巻まで発売されていますが、読み切り形式なので1巻でも2巻でも、どちらを読んでも単品で楽しめるかと思います。
かなり文字とコマが詰まっているので、時間をつぶすには持って来いの本です。
読み返しにも充分耐える、と思いますよ。
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