【ざらざら】 川上弘美




ざらざら (単行本) 川上 弘美 (著)
ざらざら


川上弘美、というと、「蛇を踏む」で芥川賞受賞、「センセイの鞄」で三島賞受賞、となかなか華々しい軌跡をもつ作家です。
特に、女性心理を描くことに定評がある著者ですが、個人的には長編よりも、ごくごく短編の方が輝くように思えます。
いや、本当に個人的な意見なんですけどね、「真鶴」好きな人いたらすいません。

私は「竜宮」「ありがとう」「溺レル」など、比較的初期の短編集から入ったので、著者の持つ独特な世界観、まるで神話や昔話を読んでいるような感覚に、とても引き込まれたものです。
ですが、文体が結構人を選ぶかな?といった感じでした。
特に、女性で、指摘な文章が好きな人には、とても好かれる感じの文章だと思います。
角田光代はちょっとあざとすぎる。
江國香織もロマンチックすぎる。
ひと癖ある感じの恋愛小説を読みたい!と感じている女性にオススメの本です。

この本に収録されている作品は、「クウネル」という雑誌に掲載されたものを集めたものです。
雑誌に連載されたものですから、読むのにもちょうどよい長さですね。
特に、寝る前や電車で移動中なんかに、「何かちょろっと小説を読みたい」と思ったときに重宝します。
短時間で読めてしまう作品ばかりなので、続きが気になってついつい夜更かし、電車の乗り過ごしなどの心配もありませんよ。
中には、作品がリンクしているものもあったりで、それらを探して読み比べてみるのも、この短編集の魅力です。
まぁ、23の短編が盛り込まれているので、中には登場人物やお話の背景が被ってくるものがあっても不思議は無いわけで......そこを惰性に感じさせないところも良いですね。

全体的にとても読みやすい印象の本です。
息継ぎを無理なくできる感じ、とでもいいましょうか。
本を読むために、もし笙野頼子を読むにしたら、酸素ボンベをつけて海中深くに潜らなければならないような、そういった深々たる集中力が必要だったりするわけですが、この短編集を読むためには、そんな重装備は必要ないです。
気が向いたときに、近所の土手に遊びに行って、白砂の岸辺をビーサンで散歩、みたいな気軽さで読めます(抽象的すぎますかね)

確かに「もうちょっと、読ませい!」なもどかしさも無いわけではないのですが、そう感じさせるのもまたこの作者の力量が窺えるところでしょう。
この短編集を気に入った方なら、「ニシノユキヒコの恋と冒険」や「古道具中野商店」なんかも楽しめるかと思います。

未だちょっと持ち運びに不便なでかい単行本サイズしか出ていないのが玉に傷ですが......。
こういう本こそ、早いとこ文庫化してほしいですね、ほんと。

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